公職選挙法とSMS

公職選挙法の改正により、インターネットを活用した選挙活動(いわゆる「ネット選挙」)が幅広く解禁されたのが2013年。これを機に、メール・SMSをはじめとした「Webで有権者に訴える手段」に関する規制が明文化・緩和され、選挙運動におけるネット活用が広まるきっかけとなりました。

 そのうち、メールについては「SMTP方式(電子メール)」および「電話番号方式(SMS)」が指定されました。電子メールはメールマガジンの配信など既に一般的になっていますが、SMS(ショートメッセージ)の活用については、近年利用が進んできたところ。しかしながらSMSの持つメリットは、選挙のように幅広い層へ確実にリーチすることが必要なシーンで活きてきます。加えて、「ニューノーマル」下での選挙運動では大勢が対面で集まる機会を作ることも限られ、オンラインの活用がますます重要となります。今回は、メール同様に公職選挙法で認められているSMSの活用について、そのメリットと活用例をご紹介します。

SMSの持つメリット

 SMSは「電話番号方式」と言うだけあって、その名の通り携帯電話だけがわかればメッセージを送れるメッセージ送受信方法です。

 大きなメリットの一つに「電話番号だけわかれば届く」という点が挙げられます。各種SNSサービスのように共通のサービス利用やアプリの登録が前提となるのと違い、携帯電話の契約があればほぼすべての端末がSMSを受信できます。

 もう一つのメリットとしては「端末を選ばない」点です。

 電話番号をキーとするので、スマートフォンはもちろん旧来のフィーチャーフォンでもSMSは受信可能です。MVNO(仮想移動体通信事業者)のユーザーであっても、通話もしくはSMSの利用契約を行っていれば受信可能で、受け取ることのできないケースは少ないでしょう。

なぜネット選挙にSMSが適しているのか

 冒頭、「SMSはネット選挙に適している」という話をしましたが、これは今ご紹介した「SMSのメリット」から導き出されるポイントとなります。

 選挙には数多くの人が携わります。選対事務所のスタッフ・手伝いからポスター貼り・チラシ手配の要員、さらには選挙カーのドライバーやウグイス嬢などなど、短い期間で多くの人の手を必要とします。ボランティアという性質上、スタッフの名前と連絡先を簡単に把握する程度の確認となることが多く、本人に個別にリーチできる情報が電話番号しかない…という場合でも、SMSならリーチが可能です。

 また「端末を選ばない」という点も選挙というシチュエーションに有効です。特に党員や支援者等有権者へのリーチにあたっては、地域によって年代構成等もまちまちなため持ち得る端末のバリエーションも幅広くなりがちです。その点、SMSを利用すれば受信側の端末の制約を受けることなく通知可能で、より確実なリーチを実現します(もちろん、事前に同意取得が必要です)。

 加えて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止という観点から、対面での「支援者集会」や「講演会」、「街頭演説」といったイベントには様々な制約がかかることから、既知の支援者・支持基盤に対する訴求手段としてネット選挙を活用する意義はこれまで以上に高まっているとも言えます。

ネット選挙におけるSMS活用シーン

 運動を行う側(候補者側)においては、何と言っても「業務連絡」に使うシーンが多くを占めるでしょう。選挙期間は分刻みでのスケジュール調整も起こり得、1日に何か所も移動しながらの遊説や街宣も行われるため、詳細なスケジュールを各運動員に確実に伝える必要があります。また、日や地域によってスタッフの出番の有り無しが分かれる上、規模によっては数十人~百人規模で連絡を行う必要も出てくることから、一斉配信を行える通知チャネルとしてもSMSは適していると言えます。配信システムの中にはURLクリックによって既読の確認を行えるものもあるので、確実に読まれたかを捕捉することもできます。

 一方、有権者向けには各種集会の通知や、スタッフ募集をかける際にも有効です。候補者側と同様に、各地での演説日程を周知し動員・協力を募る際や、欧米の選挙で主流となっている「ティーパーティー」(地域における小規模な支援者の集い)の告知等にも確実に通知できるチャネルとして有効に活用できます。